Samurai Gourmet - Text

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Samurai Gourmet - 1
(ナレーション)戦乱の時代―
おのが腕ひとつで世を渡り歩く漢(おとこ)がいた―
野武士である―
この男は現代の野武士…―
ではない
(香住(かすみ))なんで こんな店に入っちまったんだ 俺は…―
こういうのを魔が差したっていうんだな
(香住のため息)
(香住)どうやら俺は―
重大なミスを犯してしまったようだ
(香住のため息)
(香住)こ これは…!
(ナレーション)定年退職し―
サラリーマンという肩書きも―
会社の後ろ盾もなくなった1人の男―
香住 武(たけし) 60歳―
この物語はどこにでもいる還暦男が―
野武士の力を借りて―
自由に食事を おう歌するグルメファンタジーである
♪~
(あくび)
(静子(しずこ))ゴロゴロしてばかりいないで―
何か新しい趣味でも始めたらどーお?
新しい趣味って言われてもな~
(静子)ウォーキングなんかどーお?
運動不足解消になるし
よーし
よーい スタート!
(香住)サラリーマン時代は仕事一筋―
趣味を持とうなんて考えもしなかった―
定年は新しい人生の始まり―
おっ―
よーし負けてはいられん!―
昔は“いだてんの香住”って言われたものよ―
ちょっと張り切りすぎたな
ハァ… あいてて… うっ
(香住)結構 腹が減ってきたぞ…―
そうだ あそこのラーメン屋で食ってくか
ハァ…
ホッ ハッ ホッ
♪~
(香住)うわ 混んでるな―
おっ 空いてる空いてるさて~ きょうは―
しょうゆに…
(店員)いらっしゃいませー!
(香住)油断した
(男性)えーとチャーシュー1つと―
(男性)えーとチャーシュー1つと―
(男性)えーとチャーシュー1つと―
(香住)待つのは やだな―
あと餃子!
確か 1本向こうの通りにもラーメン屋があったよな…
うわっ
(女性1)あ ねぇ~―
行列できちゃってるよ(女性2)あ~ きのう
テレビでやってたからね(女性1)ね~
(香住)日本人ってのは―
どうして こうも行列が好きなのかねぇ
(女性1)決めた? 早くな~い?
(香住)ラーメンを何十分も並んで食べるってのは―
(香住)ラーメンを何十分も並んで食べるってのは―
ん~っ! ぐあっ
どうも理解できん…―
とはいえもう気分はラーメン―
とはいえもう気分はラーメン―
ラーメンラーメン…
とはいえもう気分はラーメン―
とはいえもう気分はラーメン―
ラーメンラーメン…
ラーメンラーメン…
ラーメンラーメン…
今さら軌道修正はできん―
ラーメンラーメン…
あれ? こんな所に中華屋あったっけ?―
中華屋かぁラーメンあるよな…―
客が1人もいない…―
でも―
行列店よりも 案外こういう店が当たりなんだ
よし ここにしよ
♪~
(香住)あれ?店員もいないのか?―
何なんだ この静けさは
すいませーん
すいませーん!
(香住)なんか嫌な予感…
(香住)すいませ~ん!
(香住)やめとくか―
さっきのラーメン屋に戻ろう
(マダム)はーい らっしゃいませ~
(香住)なんだ… いたのかよ―
(香住)なんだ… いたのかよ―
(マダムのため息)
(香住)なんだ… いたのかよ―
な 何だ!このキツい香水の匂いは!―
うわっ 化粧 濃すぎ!―
場末のスナックのママのような…―
いや 中華料理屋だからマダムか…
ん… ラーメンを(マダム)何 ラーメン?
し… しししょうゆラーメン
(香住)あれが客に対する態度か?
(香住)うわっ
ひっでえな…
(香住)客がいないのには―
いないなりの理由があるに決まってる―
そんな当たり前のことを忘れてた―
なんで こんな店に入っちまったんだ 俺は…―
ケバケバしいランプシェード―
中華系のポスター ―
そしてカレンダー ―
何ですか その印?―
店の客とコンペ?―
どうやら そのようだ…―
夜はラーメンというより飲み屋として営業していて―
そっちの収入が中心なんだ
(香住のため息)
(香住)どうやら俺は―
重大なミスを犯してしまったようだ―
注文を取りに来なかったあのときに店を…―
出るべきだったんだ
(ため息)
(香住)ん?―
料理は誰が作ってるんだ?―
(炒める音)
うわ!マダムが作ってるのか?―
そうだとするとますます嫌な予感…
(ため息)
(香住)早すぎないか?全然 待ってないぞ
(丼を置く音)
(ため息)
(香住)なんで ため息なんだよ―
湯気が出てない…―
まあ いいか腹も減ってることだし 食おう
ぬるい…
全然 熱くない…
(香住)もしかして 卵も…―
冷たい…―
冷たくて味がよく分からない―
もう食べなくてもダメなのが分かる―
はぁ…やっぱりパサパサだ―
なんで こんなに…ワカメが入ってんだ?―
おいおい ウソだろ―
何なんだ この長さ―
ワカメも卵もチャーシューも全部いらない―
なんか―
もう世の中の何もかもが嫌になってきた!―
せめて―
麺だけでも食べよう―
あぁぁぁ…!―
まずい~!!―
(香住)ウエエエエ!
ダメだ もうこれ以上…食えない
(テレビの音)
(マダム)うーん
(香住)今度はテレビか…―
(香住)今度はテレビか…―
うるっせえなぁ―
あぁぁぁ… うるさい!
ハァッどこも つまんないねぇ!
ハァッどこも つまんないねぇ!
(テレビを消す音)
(マダムのため息)
(香住)あ~ よかった
(ライターの音)
(香住)えっ?―
タバコ?―
客が食べてる目の前でタバコだと!?―
もう我慢も限界だ!―
こんな まずいラーメン食わされたうえに―
この態度!―
ガツンとひと言 言ってやる
あの…
ああっ
(香住)ダメだ俺には勝てそうもない―
こんなとき 野武士なら…―
なんて考えても しかたないか
もういい… 帰ろう
(野武士)まずい!
♪~
(野武士)まずいと言うておる
気に入らないなら出てっとくれ!
客に こんな まずいもんを
出していいと思うておるのか
ここはあちきの店でありんす―
何を作ろうが勝手だろ!
おととい来やがれ!―
な… 何だい! 女 相手に刀を抜こうってのかい!
(香住)そうだよな…ここで言わなきゃ 男が廃る
あの…
お会計 お願いします
(ため息)
(香住)野武士のようには なれないな
500円
(香住)げっ 万札しかない
(舌打ち)
(香住)え? 舌打ち?
ごちそうさまでした!
(香住)最後の最後まで…―
客が残したラーメンを見て反省するんだろうか
反省なんかしないんだろうな~
あの悪魔のマダムは…
(ため息)
(香住)今 俺の胸にあるのは―
(香住)今 俺の胸にあるのは―
(香住)今 俺の胸にあるのは―
(舌打ち)
“敗北”の2文字だけだ―
ただいまー
(香住)タバコ?―
俺に隠れて吸ってたのか?
あ!
ビックリした悪魔かと思ったよ…
(静子)えっ? な~に~?
あ いや あくまでこっちの話
お昼は? 食べてきたの?
あ…
いや… 食べてない
ん~ 電話くれれば何か作っといたのに~―
ほんとに間が悪いんだから
ごめんなさい
(静子)インスタントラーメンでいい?
うん!
(静子)みそと しょうゆどっちにする?
しょうゆ!
とびっきりおいしいしょうゆ作って!
オッケー
♪~
来た 来た 来た…(静子)う~ん
はい!(香住)お~
いただきます
ふ~
♪~
お~
うまい~!
♪~
♪君が壁を白く塗っている
♪ぼくは外を見ている
♪陽が沈みかけてるよ
♪ウィスキーが飲みたいな…
♪ぼくは何も何も出来ないよ
♪ただ君を見つめているだけ
♪ぼくは何も何も出来ないな
♪ただ君を見つめているだけ
♪ぼくは何も何も出来ないよ
♪ただ君を噛みたいだけなんだ
♪ぼくは何も何も出来ないな
♪ただ君を見つめているだけ
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